銀行実務 2018.03 掲載記事

2018-04-14
  1. 最近散見される窮境要因
    • 単価下落による生産性の低下
      昨今、「全ての情報はスマホの中にある」とまで言われるが、多くの情報がネット上で流通し、一般に入手可能となった。
      この環境変化は、多くのビジネスチャンスを産む一方で、また多くのビジネスモデルを崩壊させた。その一つが、商品・サービスの「※コモディティ化」「価格情報の流通」である。
      (※コモディティ化:定義の仕方は複数あるようだが、ここでは「商品の大衆化・一般化により、どこのメーカーの商品でも大差がなく、『価格』が購入・選択の意思決定になる傾向が強い状態」とする。)
    • 地方における流通業・サービス業における影響
      ネットの中は基本的にバリアフリーである。購入を検討している段階で「検索」し、「概ねの価格帯(相場)を掴む」ことが常識となった。消費者(購入者)と提供者(販売者)との情報の非対称性は現在も一定程度、存在はするもの「市場流通価格」「相場」については解消されつつある。これにより、販売単価が下がることは自然であり、当然に同じものだけを扱っていては、従前の粗利、生産性は維持できないことになる。
    • 取扱高(量)を上げ、効率・生産性を向上
      一点単価が下がっても、販売(商流及び物流)コストが下がらなければ、貢献利益当然に低下する。
      アプローチ方法として、顧客の絞り込み、差別化により単価を上げるという施策も不可能ではないかもしれないが、地方都市の経済規模が縮小する状況下では、そもそも採算のとれる事業規模にならない可能性も高い。
      したがって、取扱い品目を増やし、販売効率を高めることを検討することになる。
      但し、従前に扱ってきた商品との関連性、一体的に商談することの顧客側のメリットが明確である必要がある。
      また、これは必ずしも在庫量の増加を意味するものではない。提供するものが「モノ」であっても、現在の物流であれば(緊急性を要するものを除き)都度調達であっても事は足りる。
    • サービス商社・管理会社への転換
      もう一つのアプローチ方法が商品・サービスの見せ方の変更である。
      多くの地方都市は、人口が減少の傾向にあり、特に生産年齢人口についてその傾向は顕著である。労働力の確保が大きな課題となる中、ICT等の活用等を含めて生産性を高め、少ない労働力で事業規模を維持することを意識せざるを得ない状況であるのは、顧客である事業者・組織も同様である。
      一定の経験値や知識を必要とする知識労働者の需給バランスが崩れる中、これまでと違う新しいアウトソーシング、受注形態が生まれている。
  2. 事例
    • 葬祭業→御供養支援事業
      葬儀は、急速に簡略化、小規模化が進み、葬儀単体では採算が悪化する傾向にある。
      川下に位置する仏壇・仏具、お墓の付設も同様で、以前ほどの価値観は見いだされず、予算は縮小する傾向であった。
      事業者は、自社の事業を「ご供養支援事業」と再定義し、葬儀業から墓地・墓石、仏壇の取扱い、その後の仏事まで一体的に、一気通貫で対応する方向にシフト。個人情報の取扱いに対する世間の目が厳しくなる中、葬儀により得た情報の価値も高く、川下の工程に対する影響力も拡大したこと、地方から都市部に生活拠点を移されているご遺族も多く、効率的に段取りができるこのサービスは比較的、受入れられている。
    • 空調機器、産業機器の卸売及び設置工事業→エネルギー及びインフラ管理事業
      空調機器及び産業機器の地域代理店として一定のシェアを有していたが、事業者数の減少、公共工事予算の縮小により、業績は低迷。
      自社は、地元においてどんな役割を期待されているか、改めて事業を再定義し、これまで商社としてエネルギーを消費する機器の販売とメンテナンスを行なう事業から、エネルギーの使用状況までモニタリングし、電力契約や産業機器・空調機器の最適化・管理を事業として取り込む試みをスタートしている。
      顧客企業はベテラン従業員の退職もあり、ユーティリティー・設備の維持・対応のできる人材には不足感もある中、長年の取引により、得意先の設備・機器にデータ・知見も有していたこと及び物理的に近いという強みがこれを可能にした。
  3. 総括
    地方で成功したビジネスモデルには、規制による競争の統制や、経済規模の維持・成長及び当時と同様の価値基準を拠り所にしているものが少なくない。
    その前提条件が崩れる中、何が自社に期待されるか、我々と顧客との境界線を見直すことで、自社の貢献領域の拡がりと顧客の問題解決ができないか、事例でも使用した言葉であるが、「事業の再定義」を早急に進める時期であろう。 これら再定義による第二創業、革新が、後継者のリーダーシップの下、進められることが地方における事業承継のあり方のようにも感じる。

((株)スマイルホールディングス 代表取締役 甲斐祐治)

カテゴリー: Business 

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